男性80歳、女性86歳。これは日本人の平均寿命です。日本は世界でもトップクラスの長寿国です。
日本における成人死亡原因のトップはがんで、次いで心筋梗塞、脳梗塞と続きます。
心筋梗塞、脳梗塞はいずれも血管の異常により引き起こされるもので、患者数を併せるとがんによる死亡よりも多くなっています。
血管の疾患や異常のリスクは、歳を取れば取るほど増えてきます。
血管を健やかに保つことが、命を守ることに直結すると言っても過言ではありません。
そして血管を健やかに保つためには、エラスチンの減少を防ぐことが大切になってきます。
心臓から送り出された血液を体中に運んで行く「動脈」には、多くのエラスチンが含まれています。
心臓の収縮によって送り出された血液を、中小の細い動脈に送らなくてはならないからです。このことから、大動脈は「第2の心臓」とも呼ばれています。
加齢などによってエラスチンの機能が低下すると、大動脈の伸縮が弱くなって心臓からの圧力が中小の動脈に伝わってしまい、高血圧のリスクが高まるのです。
一方、中小の動脈は大動脈から送られてきた血液で拡張と収縮を繰り返しながら血液を体の隅々まで送ります。これができるのも、中小の動脈にエラスチンが含まれているからです。
しかし、エラスチンが不足するなどして細い動脈の拡張・収縮機能に異常が起こると、血圧の上昇や臓器の機能障害が起こります。
このようにエラスチンは血液循環にとって無くてはならない構成成分です。
エラスチンは加齢と共に減少し、その代わり伸縮性のないコラーゲンが増えるため、動脈は硬くなり、血液循環が悪くなります。
そのため脳や心臓・腎臓など重要な臓器の機能に異常が起こり、老化が進行することになります。これが古くより「人は血管から老いる」と言われるゆえんなのです。
最近話題のメタボリック症候群(メタボリックシンドローム)は、血管が硬くなってもろくなる動脈硬化を引き起こすことが知られています。
動脈硬化は、血管の内側に脂質が沈着し、「プラーク」と呼ばれるおできのようなもの(限られた部位にしか発症しない)ができ、動脈が狭くなり、ついには血流の流れが絶たれてしまいます。
このようにして心臓や脳の細胞が死に至る病気が心筋梗塞や脳梗塞です。
動脈硬化症の部位では、弾性線維が切れたり壊れたりしてやがてカルシウムが沈着しますが、この場合にもエラスチンがたっぷりストックされていれば、弾性線維が切れたり壊れたりすることを防ぐことができるのです。